起業家を育む、支える。群馬が変わる。群馬イノベーションアワード2019
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第6回群馬イノベーションアワード
中国・上海研修ツアーレポート
study tour report in china

群馬イノベーションアワード(GIA)の中国・上海研修が4月22日から6日間行われ、関係者39人が発展著しい現地の情報通信技術(ICT)を肌で感じた。生活の至る所にスマートフォンの活用が浸透し、無人型や体験型の店舗に刺激を受けた。参加者はイノベーションへの理解を深め、自らの事業に生かすことを誓った。

GIAの海外研修として中国を訪れたのは初めて。一行は国際金融都市の一つであり、創業ブームも起きている上海に足を運んだ。GIA2018の受賞者7人をはじめ、ぐんまプログラミングアワード(GPA)2019で最高賞に輝いた共愛学園前橋国際大の学生3人らも参加した。研修はITコンサルティング会社「ビービット」の藤井保文さん(34)が案内した。

中国沿岸部に位置する上海は、北京、重慶、天津と並び中国直轄市の一つ。人口約2400万人。2017年の域内の総生産額は4464億ドル(約49兆円)で、タイの国内総生産(GDP)4554億ドルに匹敵する。地下鉄が発達し、総延長は673キロと東京の2.2倍で世界1位。高さ150メートル以上のビルの多さも東京を上回り同5位につける。

国際金融の中心地の一つで、金融機関1491社が拠点を置く。スタートアップ向けのイベントも数多く開かれ、創業ブームも起きている。企業価値が10億ドルを超える非上場企業(ユニコーン)は164社(2017年)に上る。

集合写真
GIAの上海研修に参加したメンバー

一行は専門家の案内で上海市内を歩き、個人商店を含めてほとんどの支払いをスマートフォンで決済できる状況や、ネットと実店舗が融合したスーパーを視察した。情報通信技術(ICT)が急速に発展する中国の現状を目の当たりにし、刺激を受けた。

スマートフォンでシェア自転車を開錠する藤井さん(左)
スマートフォンでシェア自転車を開錠する藤井さん(左)

生活全般にIT浸透

シェア自転車の利用では、QRコードをスマートフォン(スマホ)で読み取ると自転車の鍵が開き、乗り出せることを体験した。ピーク時に70社あった運営会社が実質的に2社に選別されたことなどの説明を受け、競争の激しさやサービスの発展の速さを学んだ。

カフェやスーパーでは料金支払いをスマホ決済「ウィーチャットペイ」でして、生活のあらゆる場面にスマホが浸透している状況を体験した。IT大手アリババが運営するインターネットと実店舗が融合したスーパー「フーマー」も視察。ネットで注文された商品を店員が陳列棚から集め、コンベヤーで運んで配送する様子を見学した。

一行を案内した藤井さんは、2015年にネットの規制緩和があり、中国独自のITサービスが花開いたと説明。現状ではアリババのアプリ「アリペイ」や、テンセントの「ウィーチャット」で、支払いをはじめ映画館やレストランの予約などさまざまなことができると紹介した。

藤井さんは生活のあらゆるシーンにスマホが浸透し「(中国では)オフラインがない状況。スマホにあらゆる生活インフラが入っている」と力説した。

ネットと実店舗融合

上海の
旗艦店で学ぶ

体験を重視したスターバックス リザーブ ロースタリーの店内
体験を重視したスターバックス リザーブ ロースタリーの店内

座学の中で、インターネットが日常に溶け込み、「オフラインがなくなった中国」で店舗がどのような意味を持っているかを解説。「家にいながら何でもできるようになり、何かを体験できる旗艦店が重視されている」と紹介した。

一行は繁華街にあるナイキやスターバックスの旗艦店も訪れ、インターネットと実店舗が融合した新時代における顧客対応について学んだ。コーヒーの香りが漂う「スターバックス・リザーブ・ロースタリーでは、巨大な貯蔵たるや焙煎(ばいせん)機が置かれ、定員が目の前でコーヒーを入れるなど、五感を刺激する店づくりを体験した。

受賞者研修レポート

上海研修ツアーには大賞と各部門で入賞した受賞者7人が参加しました。
現地での講義や企業視察などを通して感じたことをレポートします。(所属・肩書は応募時)

福島 直

大賞(ビジネスプラン部門 一般の部)

ARIGATO COMPANY

福島 直

雑多で、時代が遅れていて、何か汚いらしい。
物価は安く、貧しさの中でそれでも力強く生きている。
正直に言うと上海とはそんな都市であると、文字通り勝手に想像していました。
だが、今回の5日間に及ぶ研修で私が見てきたものと感じたものは、それらのイメージを一蹴し、中国という国の面白さ、日本という国への危機を感じました。

何を見てきたかとひと言でいえば、デジタルと中国国民の現在と、これからの世界の未来であったといえるほど、中国のデジタル化は世界のこの先のデジタル化を予見していたと思いました。
何を買うにもQRコードで決済され、それがただの決済機能をもった便利機能というだけでなく、それらのアプリや端末を使い、ユーザーの行動データを取り、さらにユーザーの利便性を追求しています。
ユーザーはプライバシーや監視という概念を通り越し、自分たちが重要なユーザーであることを自覚し、自分たちを開放することで、あらゆるサービスが自分たちのために提供されていると感じている。そしてデジタル化による生活に自分たちは満足している。そんな思いを少なくとも私の滞在中は疑うことは一度もなかったです。

アプリなどの生活のプラットフォームになるようなサービスが、あらゆる事業のベースとなり、既存のビジネスモデルはそのプラットフォームの上に載せられています。
あるプラットフォームに載らないものは、別のプラットフォームを見つけるか、存在しなくなるかのどちらかであると思いました。
プラットフォームを作るビジネスをするベースレイヤーのビジネス、その上に載り、プラットフォームの上を自由に飛び回るようなビジネス、もしくはその上に載っているが、降りることができないというだけのビジネスになっていくだろうと思いました。
私たちユーザーは自分個人という小さな枠組みを重要として生きるのか、それを手放し自分たちを世界に開放する代わりに、この上ない便利さを得ることを選択するのか、その国民の選択によって私たちは本当に狭い世界で生きていくことになるかもしれないと感じました。
デジタルの中にアナログを持ち込む中国、アナログの中にデジタルを持ち込む日本。その対比を見るには最高のベンチマークの上海研修でした。

加部隆太

入賞(ビジネスプラン部門 高校生の部)

高崎高校

加部隆太

上海研修の5日間は毎日が新たな発見であふれる刺激的なものであり、私の人生のターニングポイントになったと思います。

さまざまな新発見の中でも、モバイル決済が完全に普及し切っているのには驚かされました。日本の報道で、中国ではモバイル決済が主流になっていることはある程度知っていましたが、上海の現状は私の想像を超えていました。デジタル上で決済が行われることで、私は日常生活の個人情報が必要以上に外部に漏れる可能性を心配していました。しかし、膨大な量の個人の行動データが集まることでユーザー重視のビジネスが新たに生まれるという、自分の中に今までなかった考えを知り、自分がステレオタイプにとらわれて、キャッシュレス社会の本質を捉えられていないことに気付かされました。

最近、日本でも多くの企業がモバイル決済のサービスを開始しています。それらがいつ決済方法の主流となるかは分かりませんが、いずれその時は訪れ、パラダイムシフトが起こると私は考えます。
そのようなとき、今の中国の状況とそこでの生き方を知っておくことを一つのアドバンテージとすれば、現在社会を生き抜くことができるかと思います。その点で、「OMO(Online Merges with Offline)」という考え方を学べたのはとても大切な体験だったと思います。

今回の研修で、私は世界に目を向けないことの怖さを知りました。日本はGDPを見ても世界3位と、今日のグローバル社会において世界に確固たる基盤を築いていると思っていました。しかしながら、ひとたび海外の国に焦点を当てて考えてみると、すさまじいスピードで社会構造が変化し、新たなモノが次々に生み出されていることが分かります。これを考慮すると、競争を世界規模で見たときに日本も変化していかなければ諸外国に遅れを取ることは明らかです。
そこで、今後は中国だけではなく世界への幅広い視野を持ち、その上で日本が世界でどのような立場を取っていくべきかを考えながら、これから生きていきたいと強く感じました。

吉岡奨悟

入賞(ビジネスプラン部門 高校生の部)

高崎高校

吉岡奨悟

今回僕は上海研修に参加して、自分の視野を大きく広げることができました。

研修に参加する前の僕は、日本はパソコンやスマートフォンをはじめ、さまざまな形でインターネットが使われ、ものすごくデジタル化の進んでいる国だと思っていました。確かに日本は世界的に見れば、デジタルが広く浸透していると思います。けれど、中国に行ってみると日本とは比べものにならないほどデジタルと生活が密着していました。例えばレジや自販機の支払いはもちろん、個人間のやり取りまでもが、スマートフォンのアプリを通して行われていたり、人がアプリ内で点数化されてその人の人間性が視覚的に評価されるようになったりしていました。このように生活とデジタルを一体化させることで、社会がより円滑に進むようになったそうです。

では、中国がなぜここまで発展したかといいますと、次から次へと新しいことに挑戦したり、新しいものを考案したりしていたからだと思います。それに対して日本人は、成果が出るとその現状に満足してしまい、より高みを目指そうとしない傾向があるそうです。確かに僕も日ごろから、自分の行動がうまくいくとその現状に満足してそのまま終わってしまうということが多かったです。けれどもこれでは、いつまでたっても、進歩したり発展したりすることはありません。日本は中国より何十年も前に発展し始めたにもかかわらず、現在では中国の方が大きく発展しているのは、根底にこのような風潮があったからだと思います。やはり失敗を恐れずに常に高みを目指し続けることが大事なのだと思いました。

僕は今現在、将来の夢は決まっておりませんが、自分が選んだ職業には自信と誇りをもってどんどん新しいことに挑戦し、日本や世界の発展に貢献していけるようになろうと思います。そしていつか、今の自分があるのはこの上海研修での出会いや経験のおかげだ、と思えるようにこれからを生きていきます。

武 彩伽

入賞(ビジネスプラン部門 大学生・専門学校生の部)

中央農業大学校

武 彩伽

日本も数年後には、こんな世界が広がっているのかな。知らなかった世界を自分の目で見て、感じ、体感することができたこの研修の中で、私が心に残っている言葉は「匠心×創新」、「おもてなしの心×イノベーションの心」。

信用スコアとして自分の価値が数字化される中国では、現金使用率は3%。お寺のお賽銭(さいせん)までもがQRコードになっています。スマホ診療やAIによる自動問診、医療自動販売機では薬が受け取れます。37℃以上が規定の日数を超えると保険金が出る高温保険。お客さまのニーズを掘り下げてキャッチするテクノロジーは、私の想像をはるかに超えていました。日本の多くは、変革怖い、革命怖い、安定的が一番。しかし、経済第一の中国では、短期間を重要視する。そのため、企業はいっぱい生まれ、いっぱい死ぬ。感覚の違い、スピード感の違い、切り捨ての違いがありました。

属性データではなく行動データをコンサルティングに活用しています。無人コンビニでは、顧客データを取ります。リアルな場所で画像データを取っていきます。買うものを決めている人と決めていない人の行動の違いは?どこのポップに目がいくか?そして、このデータを売ります。無人コンビニの売り上げを伸ばしたい訳ではなく、データ収集するというビジネス原理の違いもありました。
『製品=接点』コンセプトはラインの上に乗り続け、お客さまにずっといてもらうために、手を打つことができる顧客提供価値。モノからコトへ。製品から体験へ。視覚的な楽しさ。満足感。安心感。人の心をつかむ企画。お客さまが期待しているもの。お客さまの期待に応えるもの。お客さま起点で考え、お客さまをシアワセにできるやんちゃ豆(枝豆)を生産したいと思いました。失敗を恐れず、失敗はデータとして活用し、なぜ失敗したかを学び、これからも「匠心×創新」を胸に日々精進していきたいと思います。

須永 光

入賞(ビジネスプラン部門 一般の部)

三晃メンテクス

須永 光

私は約13年前(当時20歳)に上海に旅行したことがあります。
その当時のことを
「上を見ればスモッグのかかった空、下を見れば舗装されていない凸凹の道路と散らかったゴミ、前を見れば秩序のない社会とあふれかえるほどの人混み、そんな状況下でたくましく生きる人々のエネルギーを肌で感じました。」
と、ある雑誌でコメントしました。

今回の上海研修で、13年前とは大きく変わり、デジタルが浸透し、スマートフォン一つで生活が成り立つデジタル社会を体験することができました。

ビービットの藤井さんが提唱するオフラインのない社会そのものだと感じました。
ユーザーは、そのときに最適な方法でモノを買ったり、シェアリングしたりと、オンラインとオフラインの境なく生活をしていました。

その中でもアリババによるOMO型ネットスーパーの「フーマー」は画期的なビジネスモデルだと感じました。
オンラインで頼んで30分以内で宅配してくれるサービス、購買データの収集による最適なカスタマージャーニー、顧客のWOWをつくり出す目でも楽しいリテールテインメント(リテール+エンターテインメント)など、アリババの持つビッグデータがあるからこそできるビジネスは度肝を抜かれました。
しかし、そのデジタルに満ちたフーマーのビジネスも、実は何よりも泥臭いアナログな部分があり、フーマーの実店舗の裏側にあるその場所は、宅配サービス専用のバイクのドライバーであふれていました。オンラインで注文された品物を店内にいる専用スタッフが5分以内にピッキングし、それを25分以内で運ばなくてはならず、1秒を争うその泥臭さは、13年前の光景を思い出させました。

どんなにデジタルが浸透しても、最後の最後は人が関わるアナログな部分が必ず必要だし、それがすごく重要で、他との差別化できる唯一な部分になるのかなと思いました。
この上海研修で得たワクワクを必ずビジネスに生かして、GIAとGISに関わる皆さまに恩返しをしていきます!この貴重な経験をさせていただき、本当にありがとうございました。

田村雅美

入賞(スタートアップ部門)

エピテみやび

田村雅美

人生で初めての上海でした。
行く前は空気が悪い、スリが多い、汚いといった悪い印象しかありませんでしたが、実際は日本よりも進んでいる個所が多く、利便性に富み、人々は活気づき、治安がとても良かったです。
生活環境面では、日本ではインターネットのオンラインとオフラインを分けて考えますが、上海では境界線がなく、当たり前のように買い物や病気の治療にまで浸透していることに驚きました。

中でも、ジーマクレジットという信用を数値化したサービスがあり、公共料金の支払いから、クレジットカードの支払い、SNSによる人間関係、トラブルの履歴までもがスコア化されランク付けされるのには度肝を抜かれました。その管理システムはただデータを取るだけでなく、国民一人一人が「善(よ)い行い」をすることで得点がもらえ、お互いのメリットを高め、自然と民度がボトムアップできる仕組みで脱帽しかありませんでした。
もうひとつ驚いたことは、観光名所にお土産屋さんがないことでした。きっと、外部から資金を入れなくても経済が潤っているのでしょう。

現地へ行って感じたのは、街の人々のエネルギーがとても高く、中国の飛躍的な伸び率を肌で感じられたことです。スタートアップの支援も力を入れているとのことで、今後のビジネス展開の視野が広がりました。研修旅行でご一緒させていただいた皆さまとも密な時間が取れ、濃い体験となりました。

入賞(イノベーション部門)

山名八幡宮

高井俊一郎

ファントム・メナス

そう遠くない昔、はるか隣国の銀河系の話です・・・
上海に行ったのは10年以上前ですが、当時も既に上海タワーが妖楼(ようろう)と天へ伸びていて、外灘エリアは魅惑の近未来を感じさせていました。
だからより驚きました。この都市の短期間でのさらなる発展を。見るもの全てが新鮮で垢(あか)抜けて見えました。
キャッシュレスは当たり前で98%の人がモバイル決済を利用しています。タクシーの配車、食事や医療品の配達などもアプリケーション上で注文から支払いまで完結するシステムが社会基盤として整っています。また全てビッグデータとつながっているため、行動が可視化・データ化されています。

スターウォーズシリーズを見て育った世代、ワクワクしました。エピソード1の封切り時には手製のライトセーバーを持参でダース・シディアスを迎え撃ちました。
数多くのドキドキの中でも一番刺激的で考えさせられたのは芝麻信用(ジーマしんよう)です。ジャック・マーのアリババが始めたAIを使った信用スコアです。個人能力を可視化したもので評価軸は「個人特性」「支払い能力」「返済履歴」「人脈」「素行」で、制度は高く信用されています。スコアによって提携企業のサービスが有利になり入手できる情報も異なります。

AIがつけた点数に支配される違和感もある半面、平等性が高く治安も良くなりサービス意欲も向上しています。中国には与信管理がなく、多くの人が個人情報を持っていない状態があったためガバナンスの補完機能にもなっています。「善行をすると点数が増えて、悪行を行うと点数が減る」韓非子的な統治思想が根底に流れているように思われます。
さて、この経験と感銘から何を持ち帰ることができるのか?が重要です。日本は日本で独自の技術的強み、社会的強みを持っています。全く上海のまねをするわけではないが、間もなく訪れる5Gの世界観は共有しながら、次世代のビジネスを、次世代のまちづくりを考えるべきだと思いました。